エロマンガ規制と揺り戻し

松山市イラストレーターの男が自分で描いたわいせつな漫画を委託販売するなどしたとしてわいせつ図画頒布の疑いで逮捕されました。警察では6600冊の漫画本を押収しました。
逮捕されたのは松山市御幸1丁目のイラストレーター宮下昌也容疑者(39歳)です。警察の調べによりますと…

http://ncs2.rnb.co.jp/news/detail.php?recid=12597553

エロ同人誌を委託販売していたイラストレーターの男を逮捕…愛媛・松山(痛いにゅーす2ch)

これでエロマンガの規制が一気に強化されるのかどうかはまだ即断できないが、多かれ少なかれ揺り戻しがくることは間違いないだろう。
時期的には突然というよりは、ついに来たかという感があるが、みせしめになった同人作家には同情を禁じ得ない。前に「粋な消し、無粋な消し」というのを書いたが、逮捕という現実に直面すると読者というものの罪深さを改めて自覚してしまう。
どんな風俗産業でも目立てば警察に叩かれるのはあたりまえで、本番まな板ショーを売り物にしている限りは、いつかはガサ入れをくらってしまう。ゆえに捕まらずに長く続けたければ、特出し*1くらいで細々とやっていくしかないのだろうが、それではすれた客が満足しない。
いったん水準が上がってしまうと、それ以下のものでは満足させられなくなる、というのが見せ物あるいはエンターテイメントといわれるものの、冷酷な現実であり、誰かが一度でも一線を越えると全体が後戻りできなくなる。そういう意味でエロ同人はすでに一線を越えてしまったので、これから80年代のレベルに描写を戻すことはできないだろう。
警察が本気になって“わいせつな漫画”を大々的に規制する気があるのかどうかわからないが、これをやるためには“わいせつな漫画”についての“基準”を作成せねばならず、これは“恣意的な逮捕による恫喝”ができるという恵まれた現状を手放すことにつながるので、たぶんそう簡単には踏み込まないと思う。
そして印刷所や同人即売会、同人ショップなどもほとぼりが冷めるまでは、自主規制を強化するはずなので、しばらくは消しが濃くなるだろうが、例のごとく来年の春頃には元に戻っているような気がする。
定期的に逮捕者を出すことで影響力を持ちたい警察と、自主規制でその場をしのいでほとぼりが冷めるのを待つエロ同人業界、どちらも“明確な線引き”というものに対してはデメリットが大きいので、核心部分はつねに曖昧なまま揺り返しと揺り戻しを繰り返す。
エロマンガという場末において極めて、極めて日本的な風景が繰り広げられる様はまさに珍妙としかいいようがない。

*1:これも猥褻物陳列罪