特殊事情に対する説明責任

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<内閣府の「有害情報に関する特別世論調査」によると、実在しない子どもに対する性行為などを描いた漫画・イラストも規制の対象とすべきという回答が合計約9割に。ネット上の「有害情報」を規制すべきという回答も約9割に上った…

アメリカで行われた興味深い実験がある。

「あなたは有色人種に対して偏見を持っていますか?」
という問いに対して面接調査で偏見を持つと答えたパーセンテージは、無記名記入調査のものより著しく少なかったのだ。このことからほとんどの人は会話する相手から“立派な人間”だ、と思われたがる傾向を持っており、特に人種・宗教・性など倫理に関する質問に対しては本音をいわないことがわかる。

ゆえに性=ポルノについての問題は、調査方法を決めた時点である程度結果を想定することができ、あらかじめ書かれたシナリオを補強するような結果を得ることは簡単だといえるだろう。役所の調査というのは、基本的に官僚のつくった法案を補強するためにおこなわれるので、ネット上の「有害情報」についての調査結果というものの結果についてさして驚きを感じていない。

しかしながら、なぜ政府がさして利権もあるとは思えないロリ系のDVDやエロマンガを執拗に規制しようとしているかについては、少し考えねばならないだろう。

チャイルドポルノ、陪審裁判制度、SOX法、一見それぞれ全く係わり合いが無いようだが、よくみるとどれも「グローバル化」という共通したテーマがある。世界中を市場として活用するためには、それぞれの国による特殊事情=ローカルルールというものが邪魔になってくる。ゆえに投資する側にとっては各国の政府に対して、法制度を共通化することを求めるのは必然のなりゆきとなる。

欧米でチャイルポルノがもたらしている害悪については「疫病・検疫・対症療法」で書いたので興味のある方は読んでいただきたい。日本は欧米と多少事情が違うので関係ないような気がするが、現在世界を支配しているグローバルスタンダードとは異質であるということは気に留めておいて欲しい。

国際会議などで外国人と接触する機会の多い大企業や官公庁のエリート達が、日本のエロマンガについて非難のこもった口調で説明を求められる場面というのは容易に想像できる。そこで日本のマンガ文化とそこに対するエロマンガの役割、そしてチャイルドポルノがなぜ日本ではそれほど重要な問題として取り上げられないのかという特殊事情について、相手に理解させる*1ことのできる者はどれだけいるだろうか?

出会い系サイトなど性と情報通信の関係について、あまりに野放図に拡大したそれらに対して現在大きな揺り戻しがきている。それが「わいせつマンガ事件に判決」などで書いてきたようにエロマンガに対してもおよんでいるという現状を直視しなければならい。

権利とは与えられるものではなく獲得するものである

そして、

権利というものは永遠ではなく守る努力をしない者からは奪われる

もしエロマンガや同人誌について現状を維持したいと思うならば、なんらかの行動に移さなければならない。たとえば表現規制強化反対の署名・政治家へのロビー活動・街頭宣伝・有識者への個別訪問・公開質問・管轄省庁との懇談会などなど。

どれも厄介でめんどうなことだが、なにかをしなければいけない局面にさしかかっている現況に対して、いったいどういうことができるのかこれからも考えていくつもりだ。

*1:“納得”させられればいうことはないが恐らく無理だろう