現代徴兵制考。または集団の老衰について

http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010030401000592.html

自民、徴兵制導入の検討を示唆…改憲案修正へ

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1433014.html

貧すれば鈍する、という言葉がこれほどあてはまる例はそうないだろう。
普天間基地をめぐる与党内のごたごたには、いい加減あきれていたが、これなどはそれを通り越してもはや痴呆としかいいようがない。
以下、その理由をおもいつくままに。

  • 高度に情報化した現代の戦場では、兵士には高度な専門知識と訓練が必要であり、一年やそこらの教練しか受けていない者は、飯や便所の世話をしなければならないことを考えると、案山子よりも邪魔。もっともこのあたりは専門ではないので週刊オブイェクトリアリズムと防衛ブログの解説を期待している。

  • 子だくさんで口減らしが必要だったころならともかく、子供一人に対して父母に爺二人・婆二人、加えて子供のいない叔父叔母など、十人以上の人間が関わっていることはざらである。そんな大事な子供さんが兵隊に取られた先で脚の一本でも無くそうものなら、総理の首が変わるくらいではすまない。少なくともそんな状況で選挙を戦うくらいなら、出馬しない方がまだましだろう。
  • はるか昔のことでだからか、あるいは野党暮らしで忘れ果てているようなので指摘するが、郵政選挙で圧勝した小泉内閣ですら自民党単独政権ではなかった。最低でも公明党と組まねば与党にはなれないのだ。先の大戦中に弾圧を受けた創価学会が、明治憲法に逆戻りするように見える改憲に乗ると思っているとすれば、歴史認識という点で度外れて楽観的、世間はこれを馬鹿という、としかいいようがない。
  • 二十世紀風にいえば、日本で徴兵制復活か、という第一報がロイター発で世界へ打電された瞬間、ソウル・北京・マニラ・ジャカルタサイゴンシドニー・モスクワ、おっと平壌を忘れるところだった、あたりでは焼かれた日章旗によって地球の温度があがる程度の反応が起きるだろう。でも、同盟国である米国ならばわかってくれるよね、と期待しているならば、やはり阿呆としかいえぬ。
  • ドイツを引き合いに出すのならば、当然、明治から敗戦までの過去の全否定をするつもりなのだろう。東西分割という苦渋を嘗め、戦う民主主義を常に表明し、ナチスとの徹底的な決別を示しているからこそ、ドイツは軍隊を持つことを許されている。そして、日本はそれをしない代わりとして九条を持っている。この認識無くしてドイツうんぬんをいうのは、かの国への侮辱でしかない。

 思いつくままにあげたが、政治的・軍事的・外交的・歴史的な素人ですら、この程度のことはすぐに頭に浮かぶのだから、自民党の老耄ぶりはまったくもって惨憺たるものだ。これまた素人考えなのだが、民主主義には健全かつ強力な対抗勢力が必要であり、そのいったんを担う役目がある責任ある人間がこんなことを口走るようでは、新聞的にいうとますますもって政治に希望が持てない。
 個人的には、今の日本には中小の資本家の価値観を代弁する役割を持った政党が、国会で影響力が行使できるくらいの議席を持つ方がいいと思っているのだが、それは自民党では無いことを今回の一件で思い知らされた。阿呆に投票しても死に票になるだけだ。
追記
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100305k0000m010084000c.html
共同通信のとばしのようだった。
が、

「民主主義国家における兵役義務の意味や軍隊と国民との関係などについて、さらに詰めた検討を行う必要がある」と提起した。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100305k0000m010084000c.html

時点でこうなることが予見できないくらいに、耄碌しているようだ。
この手の発案をする自民党シンクタンクはどうなっているのかと、検索をしてみたら。2月9日に、山崎拓前副総裁(73歳)を総合政策研究所所長にあてる人事が決まったそうだ。
自民党の人材難はもはや深刻から喜劇へと移行している。